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上海市 犬の一人っ子政策実施
2011年5月25日
私の住む上海市内のマンション。朝の出勤前や、夕方になるとマンション敷地内の広場や芝生には散歩の犬たちが元気に走り回り、飼い主達はやさしく愛犬を見守っている。愛犬家ならずとも、微笑ましい市民の幸せの一コマだが、この情景にまもなく変化が現れそうだ。
経済発展の続く上海。市民の生活は質、内容ともに大きく変化した。住宅環境は大きく改善され多くの市民が横丁の狭い長屋から高層マンションに移り住むようになった。また、結婚や仕事の理由で核家族化が進んでいる。一昔前までは経済的、住宅環境的に大型のペットを飼うことは難しく、ペットと言えば金魚や小鳥が多かったが、今では多くの市民が生活の癒しを求めて様々なペットを飼うようになった。街のあちこちにペットショップがあり、様々なペットやペット用品が売られている。マンションでの室内飼いのためか、冬場には様々な洋服で着飾った犬たちが散歩し、犬の美容室はどこもにぎわい、犬たちが気持ちよさそうに手入れを受けている姿が見られる。また犬や珍しいペットが増えるにつれて、ペット病院も増えてきており、ペット先進国の日本の獣医が常駐するペット病院では、ペット達に手厚い治療が行われている。ペット産業花盛りだ。
しかし、犬たちが増えてくるとそれなりに問題も増えてくる。マナーを守らない飼い主も少なからずおり、糞の始末をしない、散歩や運動の際につながない、スーパーや食堂に愛犬と一緒に入ってくる、マンションでの鳴き声など様々だ。上海市では毎年10万件以上の犬による傷害事件が発生しているとの報告もあり、先日は犬を連れてタクシーに乗ろうとした客が運転手に断られ、運転手を殴打する事件も起き、犬と人との摩擦は増えるばかりだ。
このような大都会での犬と人の摩擦を抑えるため上海市では『上海市養犬管理条例』を定め、今年5月15日から施行されることになった。本条例により政府部門の犬の管理と飼い主の責任を明確にしたのだ。
現在、上海市で登録されている飼い犬は約16万頭であるが、実際に飼われている犬は60万頭といわれる。まずは飼い犬について登録制度を実施する。犬を飼う場合、指定のペット病院などで狂犬病の予防接種とICチップの埋め込みを行い、公安部門指定の場所で身分証明書、不動産権利書または不動産賃貸証明書、狂犬病予防接種証明書を提出し「養犬登記証」を取得しなければならない。中国ではまだまだ多くの狂犬病が発生しているため、予防接種を受けなければ登録できず、予防接種の有効期限が過ぎると「養犬登記証」が失効して、飼えなくなるという仕組みだ。普段の飼い方では犬を連れて外出する際には鑑札を付け、リード(引き紐)は2メートル以内とし、糞は速やかに処理する。公共の場所、商店、飲食店への連れ込みの禁止など、ルールとマナーの細かな規定が定められている。そして、増え続ける犬たちとの摩擦を抑えるための条項の一つが「個人が市街化地域で犬を飼う場合、1軒につき1頭に限る」である。
飼われている犬は好んで摩擦を起こそうとしているのではない。乾燥した都会生活のなかで犬を愛しても、他人を愛せない一部の愛犬家の自覚不足が犬の一人っ子政策を生み出したようだ。
日中経済貿易センター
上海事務所 池田稔

